いつの間にか長くなったLA暮らし

ロサンゼルス(LA)に住み始めて、いつの間にか40年以上が過ぎました。仕事と趣味を楽しみながら、忘備録としてつらつら書いています。

読書「熟柿」佐藤正午

ラクラシ


取り返しのつかないあの夜の過ちが、あったはずの平凡な人生を奪い去った。

2026年本屋大賞ノミネート!!
第20回中央公論文芸賞 受賞
本の雑誌が選ぶ2025年度上半期 ベスト10  1位

激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子・拓を出産する。出所後息子に会いたいがあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は、息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。『鳩の撃退法』(山田風太郎賞受賞)『月の満ち欠け』(直木賞受賞)著者による最新長編小説。Websiteより



これは来る。


グッと来る。


話の持って行き方が実に見事なこともあるが、どうなるんだろうと思って止まらない。


ストーリー自体は淡々と進んでいく。


最初のうち、かおりが本当に事故を起こしたかどうかもわからないまま話が進み、


刑期を終えて出て来たところまで話が飛ぶ。


実際に事故を起こしたのか、なぜ服役することになったのかの説明が一切されない。


それが、話が進むにつれて、少しずつ何があったのかが分かっていく。


その文章には無駄が一切ない。


一言一言、胸に刺さるように言葉が入ってくる。


最後の場面では、心が温かくなって泣きそうになる。


事故を起こしてから何と17年間。


一人で苦しんできたかおりの心に、やっと灯りが灯る。



タイトルの「熟柿」(じゅくし)については、


最初の場面で、親戚のおばさんのお葬式で、庭にあった柿の木にまつわる話として、


おばさんが、子供達には渋柿だと言っていたが、


実は甘柿で、それを限界まで熟させて、


ドロドロになった柿をチュルチュルと吸っていたという説明がされる。


次に柿が出てくるのは、かおりがひき逃げをした徘徊の老婆が、


両手に柿を抱えていた場面。


どちらも、かおりにとっては、柿に対して良い思い出とは言えないはずだ。


だが、最後に、熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、


気長に時期が来るのを待つことの例えとして、


熟柿という言葉があると教えてくれ、長期戦でかおりと向き合ってくれた男性、


土井さんとの明るい将来に結び付く。



とても読み応えのある1冊だった。












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