読後感『82年生まれ、キムジヨン』
韓国でベストセラーになった小説の日本語訳。
チョン・ユミさんとコン・ユさんが演じて映画にもなった。
『82年生まれ、キム・ジヨン』予告 10月9日(金)より 新宿ピカデリー他 全国ロードショー
韓ドラを観ていると、女性たちはみな美しくて優秀で、
キャリアウーマン(死語?)が出てくることが多い。
女性の役員や上司も多いし、下町のアジュマ達は生活力があってたくましい。
でも、今でも社会の中では
女性蔑視やセクハラがあることを見せているドラマも少なくない。
短い期間に経済的に発展してきた陰には、その速さに付いて行かない古い価値観が
相変わらず残っているのだなあと思わされる。
この本は、キムジヨンという女性が、女性であるばかりに受けてきた理不尽な扱いを、
淡々と綴っている。
苦労してやっと就職しても、男性社員に比べて待遇に差があったり、
特に結婚、出産、育児は女性が担当するものだという考え方はいまだに根強い中、
「いったん退職し、落ち着いたらまた働けば良い。」
と安易に言う夫の言葉に対して
「失うもののことばかり考えるなって言うけど、私は今の若さも、健康も、職場や同僚や友だちっていう社会的ネットワークも、今までの計画も、未来も、全部失うかもしれないんだよ。だから失うもののことばっかり考えちゃうんだよ。だけど、あなたは何を失う」
と返したジヨンの言葉が胸に刺さった。
巻末の解説の中で、伊藤順子さんが書かれていたが、この本の中では、
ジヨンの夫のチョン・デヒョン以外の男性には名前がない。
父親も弟も、最後まで父親と弟のままだ。
女性は、結婚すると○○さんの奥さん、育児をしている間は、○○ちゃんママなど、
名前を呼ばれることが少ない。
このことを意識しているのか、この本の中では、女性にはすべて名前がある。
そのことにも意味があるのだと伊藤さんは言っている。
映画にはコン・ユさんが出演するということで、期待して観たが、
私は小説の方がジヨンの気持ちに寄り添うことが出来たと思う。