元気じゃないからここにいる
持っている保険の種類にもよるが、アメリカの多くの人には、かかりつけのドクターがいて、定期的に健康診断を受けるようになっている。そこで気になる症状があると専門医に回され、精密検査を受けることができる。
乳がんや子宮がん、大腸検査なども、ドクターから、
「そろそろやったほうがいいね。」
と言われて
「はーい」
という感じで定期的に受けている。保険が効くので、自分の持ち出しはほとんどない。
なので、医者にかかるイコール病気という発想はあまりなく、多くの人は健康維持のためにドクターオフィスを訪れる。
その日も、健康診断の予約があったので、待合室にいた。
あら、知ってる顔。
前に一緒に働いたことのあるS氏だ。
「あら、久しぶり。お元気?」
「元気じゃないからここにいるんだよ。ここ、医者だよ。」
大変失礼しました。
自分がそうだからと言って、他の人も健康診断と思ってはいけない。
聞けば、運動不足と不摂生で、エコノミー症候群になってしまったとのこと。
まあ、それは大変。
幸い既に回復に向かっていて、その日は検診後にお薬を出してもらうだけということだった。良かったこと。
ところで、Sさんには二人のお子さんがいて、もう成人しているはずと思ったので、
「お子さんたちはどうしてます?」
の問いに、
「二人とも30歳を過ぎたのに、まだ家にいるんだよ。」
とのこと。
「あら、良いじゃないですか。きっと居心地が良いのね。」
「さっさと自立してくれないかと思ってるんだけどね。」
「僕、いつまでたってもリタイアできないよ。」
レントの高いLAでは、若い人の自立は金銭的に厳しくなっているし、実家があるのだから、あえて家を出る必要もないのだろう。
親にしても、それはそれで心強いのではないかと思う。
あの後、別の場所でお会いしたS氏、相変わらず不摂生の様子。
お子さんたちのためにも、いつまでも健康でいて頂きたい。