いつの間にか長くなったLA暮らし

ロサンゼルス(LA)に住み始めて、いつの間にか40年以上が過ぎました。仕事と趣味を楽しみながら、忘備録としてつらつら書いています。

急なお誘い③ N子の気持ち


能天気に旨い旨いと飲んだり食べたりしている私に、


「それで、ここから本題なんだけど。」


と、N子の話が始まった。


本当に説明が上手だから、自分がどう思っているか、私に何をどのように頼みたいかなどを


理路整然と話し、気が付いたらカバンから封筒を出して渡されそうになっていた。



あれれ。


ちょっとちょっと。



前から聞いていたのは、帰国後もしばらくは銀行関係や年金、官公庁からの郵送物が


届くと思うので、私の住所を貸してもらいたいと言う事だった。


ある程度まとまったら日本のN子に送ってほしい。


それくらい何ともないことよ。


30年以上の付き合いでお互い気心が知れている。快く引き受けるよ。


でも、タダでは心苦しい、お礼をするというのも聞いていた。


聞いていたけど、いざ具体的に金銭を見せられるとうろたえる。


お願いしますと言って渡された封筒に入っていたのは、1か月50ドルで2年分の現金。


私、そんなつもりで引き受けたんじゃないのに。



でも、わかるんだ。


N子の気持ち。



大切に思っているからこそ、「友だち」という言葉に甘えず、


頼む方も頼まれる方も、「友だちだから」と、うやむやにしたくないという思い。


「友だちだからこそ」、お互い責任を持って頼み、引き受ける。


それを換金する際、多過ぎもなく、少な過ぎもしない額を自分で決めて


「お願いします。」


と渡してくれた。


私がN子のことを分かっているのと同じように、N子も私のことをわかっている。


私たちの間に金銭が発生するのは嫌だと私が駄々をこねることも予想していたのだろう。


だからこそ、きちんと形にすることで、


「甘えるな。」


と言いたかったんだろう。そう。甘えているのは私だ。


だからこれは、断っちゃいけないN子の気持ちだと思った。



写真を撮って笑顔で別れたが、N子の帰国が急に現実身を帯びてきて、


帰り道、涙が止まらなかった。

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