ワカコさん流ターキーの焼きかた / 読書:「黄色い家」川上未映子
いつものように、タンクトップとショートパンツで現れたワカコさん。
「今日はこれからターキーを焼く準備よ。」
とおっしゃる。
国際結婚をしている彼女は、アメリカ式の感謝祭パーティーをするそうだ。
「何かする?」
と聞かれた日本人組の、M子さん、マキさん、私は、
「と、特には、、、🥶🥶」
と答えて白けさせた。
日本人家庭でも、やる家はあるようだけど、うちはパス。
ワカコさん、
「これからタ―キーをマッサージするのよ。」
だそうだ。
なるほど。
マッサージに見えないこともない。
よ~~くマッサージすると、よりおいしくなるのかも。
………***………***……
読んだ本
「黄色い家」は、1990年代の社会的な不安定さを背景に、生活の綱渡りを余儀なくされた若者たちの挑戦と苦悩を描く川上未映子の小説です。
物語の中心人物、伊藤花は、苦境に立たされた若い女性です。彼女は黄美子という女性と出会い、ともに生活を始めることで新たな道を歩み始めますが、彼女たちの生活は次第に犯罪に手を染めることで暗転していきます。
この小説は、経済的貧困や社会的孤立というテーマを通じて、人間の尊厳や倫理、選択の重さを掘り下げています。読者は、彼女たちが直面する困難な状況と心理的葛藤を通して、現代社会の厳しい現実を目の当たりにすることになります。
母子家庭で、経済的にも恵まれない環境で育った花が、
自立しようと、高校生時代にファミレスで必死に働いて貯めたお金を、
母親の元愛人に盗まれる。
落胆する花の前に、母親の知り合いの黄美子という女性が現れ、
「一緒に行く?」
と声をかける。
家出同然に黄美子に付いて行った花は、黄美子と一緒にスナックで働き始める。
そこに同年代の二人の少女が加わって一緒に働き、順調に貯金が増えて行ったが、
詐欺に遭った母親の借金を返したり、店が火事になったりして、
せっかく貯めた金も、働く場所も失い、
困った花は、だんだんと悪事に染まっていく。
犯罪と分かっていながら、お金を貯めて、何とかして今の境遇から抜け出したいと焦る花の、
心の葛藤が、とても詳しく細かく述べられていて、
読者は、これは犯罪だと思っていても、感情移入してしまって、
どこかで花を応援したくなってしまう。
花は、決して多くを望んだわけではない。
だが、底辺でもがく若者に手を差し伸べるのは、やはり底辺の大人だった。
自分はそういう大人たちに利用されていただけだったと気付いた花は、
やっとそこから逃げ出すことになる。
30年後、訪ねて行って再会した黄美子に、花は、
「黄美子さん、私と一緒に行こう。」
と声をかける。30年前、自分が黄美子に言われたセリフだ。
このラストシーンはとても印象的だった。