来年の手帳
毎年今の時期になると、
となり部のマリアが、次の年のカレンダーブックを持って来てくれていた。
83歳で、とうとう現役引退をするということで、大きなさよならパーティーをし、
オーナーと抱き合って泣いて、周りで見ている私たちも、
思わずもらい泣きした、あのマリア。
いつの間にか、ちゃっかり普通に働いていて、
みんなして、
「あれ?」
と思いながら、
「リタイアしたんじゃなかったの?」
と聞くこともできず、内心、あの時の涙返してほしい位だと思いながら、
それも言えずに、忘れたふりをしている。
そのマリアが、いつものように、来年のカレンダーブックを持って来てくれた。
ありがたい。
毎年のことで、色は違うがサイズは毎回同じなので整理しやすく、助かっている。
さよならパーティーの時は、
「今年からは自分で買わなきゃいけないのね。」
という言葉が頭をよぎったくらいだ。
となり部は専門職で、皆さんライセンス保持者だ。
マリアは、今年そのライセンスが切れるのを機にリタイアを決め、
更新はしないと聞いていた。
それが、普通に働いているのを見ると、更新したようだ。
更新期間は2年間。
次は85歳だ。
いつまでもお元気でいてもらいたいものだ。