いつの間にか長くなったLA暮らし

ロサンゼルス(LA)に住み始めて、いつの間にか40年以上が過ぎました。仕事と趣味を楽しみながら、忘備録としてつらつら書いています。

読書2冊:「海神(わだつみ)」「悪い夏」染井為人



「正体」を読んで、染井為人さんの文章のうまさに引き込まれ、


他も読んでみたいと思って見つけたこの二冊。


この作家さん、重いテーマでも、登場人物の心理描写が上手くて、


読みながら、一人一人の気持ちになりきって読み進めることが出来るので、


止まらなくなる。



特に「海神」は、東日本大震災で被災した三陸沖の島を舞台に起きた、


復興支援金の横領疑惑を描いたもので、実際に起きた事件を元にしていると知り、


主人公遠田が、


「災害は儲かる。」


と言い切ったところでは、思わずぞっとさせられた。


物語は、2011年、2013年、そして2021年を、行ったり来たりして進んでいくのだが、


そうすることで、各場面の説明がされていくので、混乱することもなく、とても読みやすい。


エピローグで染井さんが、この物語を書こうと思った理由に付いて、


「人は二度死ぬ。一度目は肉体の死、二度目は人々の心から忘れ去られたとき。我々は、震災を忘れてはいけない。」



と語っているように、自然災害だけではない、人為的な被害が、実は起こっていたことを、



私たちは知るべきだと、深く考えさせられた。



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「悪い夏」は、生活保護の不正受給をめぐって、関わる人たちが


どんどん深みにはまっていく負のループの話だ。


最初のうちは、社会問題を取り扱うミステリーと思いきや、


最後は、もうハチャメチャすぎて笑ってしまった。


でも、もしかしたらあり得る話かもしれないなあなんて思った。


本の帯にあるように、本当に、「クズとワルしか出てこない。」



以前、テレビで見た番組を思い出した。


生活保護費の支給日には、銀行のATMに受給者たちの列ができる。


その人たちとは明らかに風体の違う男たちが、保護費を受け取った人たちを待っている。


受給者から、受け取った保護費をピンハネするためだという。


彼らは、ホームレスの人たちに住所を持たせ、アパートに住まわせる。


与えるのは、最低限の食費のみ。


いわゆる、貧困ビジネスだ。


こんなことが本当に行われているのかと驚いたが、


この本の中では、その話題にも触れている。



不正受給をする人、させる人。


本当に必要なのに、何らかの理由で、その保護から取りこぼされてしまう人。


そういう人たちと関わっていくうちに、自身もその渦に飲み込まれて、


自分を見失ってしまう、ケースワーカーの人たち。


人は、簡単に道を踏み外してしまうんだなと思わされる。


この本は、図書館でもなかなか順番が回って来ないほどの人気で、


2025年に映画化も決まっているそうだ。



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