いつの間にか長くなったLA暮らし

ロサンゼルス(LA)に住み始めて、いつの間にか40年以上が過ぎました。仕事と趣味を楽しみながら、忘備録としてつらつら書いています。

読書:「ツミデミック」一穂 ミチ


ツミデミック



いつもなら、触手が動くのは、「本屋大賞」とか、


映画やドラマになったような、割と大衆ものが多い。


この「ツミデミック」も、直木賞受賞作ということで、あまり構えずに読み始めた。


コロナ渦を舞台に、犯した罪をテーマにして書かれた短編6作が収められている。



最初の1、2作は、読みながらリタイアしそうになった。


はっきり言って、あまり私の好みではない。


でも、賞を取ったくらいなのだから、どこかに引き込まれるものがあるはずだと思って読み進めた。



個人的には、4作目が良かったと思った。


どこにでもいそうな、善良な小市民の主人公が、


パンデミックで無職になり、だんだんと無気力になって行く。


そんな時に、息子を通して、近所に住む老人と知り合い、


彼は、ある下心を持ってその老人に近づく。


人間の弱さと、良心との境目で揺れ動く心が、なんとなくわかる気がした。



生意気に、自分の好みなんか語ってしまったけど、


どの作品も、多分、パンデミックという特殊な状況下では、


起こりうることかもしれないと思わされたのは確かだ。


コロナがなかったら、きっと何事もなく普通に生きていただろう人々が、


簡単に道を踏み外してしまう。


ぎりぎりの所で生きている人の心の動きが、とても分かりやすく描かれているので、


どの作品も読みやすく、後味が良いものも悪いもの(失礼)も、


心に残る作品集だと思う。

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