読書 / 「老人ホテル」原田ひ香
年金暮らしの老人ばかりが住むホテルでの、節約マニュアル本かと思ったら、
毒親に育てられて、満足に教育も受けられなかった女性エンジェルが、
どん底から這い上がる成り上がり本かと思ったら、
不動産投資や株式投資のHow To本かと思ったら、
あらら、
ああらら、
いったいどこへ向かっていくのやら。
というのが、読んだ印象だった。
話は、生活保護を受け、自堕落な生活を送る大家族ファミリーの末っ子として生まれた
エンジェルが、かつて働いていたキャバクラのビルのオーナーだった光子という老女を
街で見かけ、彼女が暮らしているホテルを突き止める所から始まる。
エンジェルにはある思惑があり、どうにかして光子に近づくために、
そのホテルで清掃員として働き始める。
やがて光子から信頼を受けるようになったエンジェルは、
毒親と縁を切り、光子から不動産投資について学び始める。
そのあたりから、私の頭の中には?マークが飛び始める。
銀行からの融資を受けるには、正社員であることが必要だと言われたエンジェルは、
働いているホテルで正社員の職を得る。
そして、光子に教えてもらいながら、家賃の安いアパートへ引っ越し、
自炊をすることで、毎月貯金額を増やしていく。
あのさ、
それまで、中卒で、物を知らずに育ってきたエンジェルは、まともな職に付けなかった。
それが、正社員になって、毎月貯金が出来たら、それで十分普通の生活じゃない?
光子が言うように、不動産も、欠陥品をつかまされたら全財産を失うこともあるなら、
世間知らずのエンジェルが、上手くやって行けるとは思えない。
そして、がっかりしたのは最後だ。
これはないでしょうと思った。
それまでの、親から教えてもらって来なかったことを、
周りの人たちから教えてもらいながら、成長して行くエンジェルの様子は、
ほほえましく、応援したい気持ちだったのが、一瞬にして冷めた。
こういう終わり方もあるのね。